留守模様蒔絵手付きたばこ盆
装 飾 | : | 木地蒔絵 金銀高蒔絵 金金貝 金銀切金 |
火入れ | : | 真鍮謡曲模様彫り |
寸 法 | : | 22.9×16.9×16.7cm |
その他 | : | 木地蒔絵は謡曲留守模様 |
※こちらは常設しておりません。
やや小振りで、蒔絵も地味目の木地蒔絵のため、目立たないたばこ盆ですが、それがこの作品の趣向のようです。蒔絵の趣向の留守模様は、古典文学や故事逸話、あるいは和歌・謡曲などの芸能などの登場人物を描かず、背景や持ち物(小道具)のみを絵画の構図や工芸の意匠として描いたものです。この作品などは、その典型といえるもので、右側には木地に金銀の高蒔絵で「鉈(なた)、桜、松、梅の鉢植え、雪」などが描かれ、謡曲「鉢の木」を表しています。しかし、必要な小道具こそあれ、そこには登場人物である北条時頼も佐野源左絵衛門常世夫婦も描かれていません。さながら状況として、その場面から登場人物が忽然と消え、留守になってしまったという想定です。つまり、その話の重要な背景・小道具を示すことにより、見る者にどの物語かを想像させるものなのです。同じようにたばこ盆を見てみると、正面は「木賊刈(とくさがり)」、裏は「猩々(しょうじょう)」、左は「汐汲み」を表現しています。また、上部の火入れの火屋には「養老」が表現されており、いずれも謡曲を題材にした留守模様でまとめるという、大変に凝った造りのたばこ盆であることがわかります。