塩づくりを描いた絵画/『西国名所之内 十二 赤穂千軒塩屋』
当館で所蔵している製塩関係の絵画としては、風俗図屏風や浮世絵、版本などがあります。塩は古くから和歌や謡曲、歌舞伎などの題材としても取り上げられてきたため、それらにちなんだ絵画も多く、必ずしも全ての作品が製塩技術史の研究資料として参考になるわけではありません。また、絵画の世界においても、製塩は、海辺の風景として様式化されており、他の作品の模倣など、実地に取材せずに描いたと考えられる作品が多く残されています。しかし、中には、細部まで描き込まれた写実的な作品もあり、それらは製塩技術研究の参考となる、貴重な歴史資料となっています。
◆『西国名所之内 十二 赤穂千軒塩屋』
作者 | : | 歌川貞秀 |
形態 | : | 大判錦絵 |
時代 | : | 慶応元年[1865] |
※こちらは常設しておりません。
「西国名所」シリーズの1枚として、赤穂の東浜塩田の景観が描かれています。絵図面などのような、記録を目的とした絵ではないにもかかわらず、石垣の堤防、沼井(ぬい=鹹水溶出装置)、釜屋などが、実際に現地を見て描いたと思われるほど写実的に描かれています。塩浜を描いた数多くの浮世絵の中でも、当時の入浜式塩田の様子を最もよく表している作品でしょう。