メキシコ西部地方出土のパイプ
上 | : | ヘビを象った赤色土製パイプ(メキシコ西部地方、11〜15世紀頃) |
下 | : | コヨーテを象った赤色土製パイプ(メキシコ西部地方、11〜15世紀頃) |
※こちらは常設しておりません。
植物としてのタバコは南米のアンデス地方を発祥の地としていますが、古代アメリカの人々がいつ頃からたばこを利用するようになったかについては、現在のところ詳しいことはよくわかっていません。しかしヨーロッパ人がやってくる以前の中南米の古代文明圏の中で、特にメソアメリカ(現在のメキシコ中部からコスタリカ西部にいたる古代文明圏)には、たばこの利用についての情報が比較的多く残されており、人々が儀式や病気の治療、あるいは嗜好品としてたばこを利用していたことがわかります。
現在、たばこに関する最も古い資料は、メソアメリカに栄えたマヤ文明のパレンケ遺跡「十字の神殿」入口奥の石柱に残る「たばこ(葉巻)を吸う神」のレリーフ(浮彫り)で、7世紀末頃という年代を知ることができます。
また、11世紀から16世紀のスペイン征服まで、現在のメキシコ・ミチョアカン州を中心とするメキシコ西部地方に栄えたタラスコ王国の遺跡からは、多くの土製パイプが出土しています。これらのパイプは、神官たちが儀式の際に用いていたもので、16世紀に記録された『ミチョアカン報告書』にも、儀式の中で神官たちが喫煙している様子が描かれています。パイプの形や大きさはさまざまで、単純な形で大型のものから、ヘビや鳥、コヨーテなどを装飾したものまで、バラエティーに富んでいます。また、低い温度で焼かれたこれらの土製パイプの多くは赤褐色ですが、なかには白色で「スリップ」と呼ばれる釉薬がかかったものもみられます。