嗅ぎたばこ入れ 人々を魅了した掌上の宝石
嗅ぎたばこを嗜む風習は、17世紀末頃までに中国へ伝えられ、まず清朝の宮廷で流行し、次第に一般にも普及していきました。はじめは、ヨーロッパ製の嗅ぎたばこ入れをまねて箱形(スナッフボックス)のものが作られたようですが、湿潤なアジアの気候に合わなかったのか、やがて薬瓶をもとにした中国独自の密閉式容器が生まれました。それが「鼻煙壺(スナッフボトル)」です。小さな壺や瓶にかぶせられた蓋には匙が付けられ、嗅ぎたばこをすくい出すことができるように工夫されていました。鼻煙壺は、大部分が掌に入るほどの大きさで、実用品であるとともに愛玩品でもありました。貴石、ガラス、磁器、金属、木や象牙など、各種の材料に高度な技術で精巧な装飾を施し、ヨーロッパ製の嗅ぎたばこ入れとは異なる中国独自の美術工芸品として1ジャンルを確立しています。
「龍袍(りゅうほう)」と称される
清朝の宮廷服(19世紀)