嗅ぎたばこ入れ 人々を魅了した掌上の宝石
微粉末状のたばこを鼻から吸い込んで楽しむ「嗅ぎたばこ」は、わが国では馴染みのないものですが、その歴史は遠くコロンブス以前のアメリカにまで遡り、16世紀後半にはヨーロッパに伝わって、その後一世を風靡しました。18世紀末にフランスとオーストリアで売られたたばこの約8割が、嗅ぎたばこでした。17世紀末には中国にも伝わり、清朝の宮廷社会において大流行しました。
本展を飾る「スナッフボックス」や、「スナッフボトル」とも呼ばれる中国の「鼻煙壺」は、この嗅ぎたばこを入れて携帯するための容器です。嗅ぎたばこ入れは、“掌上の宝石”とも評されるほど、美術工芸品としての価値を持つものも多くあります。これはヨーロッパでも中国でも、まず宮廷社会を中心に広まり、上流階級の人々のファッションとなったことに深い関係があります。
嗅ぎたばこは、もともと貴重な「薬」として紹介され、やがて優雅に嗜む嗜好品となりました。それに伴い、容器の嗅ぎたばこ入れに贅を競い合うようになり、美術工芸品にまで高められていきます。絶対王政時代のヨーロッパ諸国の王侯貴族などの間では、嗅ぎたばこ入れの逸品を多数所持することが富や権力の象徴となり、下賜品としても使われました。
このように宮廷社会から広まっていった嗅ぎたばこは、19世紀頃には一般の人々の間でも人気を呼び、ヨーロッパ各国でさまざまな素材や形をした嗅ぎたばこ入れが作られました。また、中国・清朝においても乾隆帝の時代(在位 1735〜96)以降、鼻煙壺の素材は多様化し、華麗なものが数多く見られます。
しかし、貴族的な嗅ぎたばこの習慣は、19世紀初頭頃には廃れてしまい、贅を凝らした当時の嗅ぎたばこ入れは、現在、フランスのルーブル美術館や台湾の国立故宮博物院などの世界の美術館・博物館や、愛好家のコレクションとして秘蔵されており、目にする機会も限られています。
本展では、ヨーロッパや中国で作られたさまざまな「嗅ぎたばこ入れ」約250点を展示し、その文化的背景を紹介します。嗅ぎたばこ入れに表現されている、当時の人々の美的感覚の豊かさを感じ取っていただければ幸いです。
主 催 | たばこと塩の博物館 |
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協 力 | 神戸ファッション美術館 ポーラ文化研究所 |
会 場 | たばこと塩の博物館 4階特別展示室 |
開館時間 | 午前10時〜午後6時 (入館締切は午後5時30分) |
休館日 | 毎週月曜日(ただし、4月30日は開館) 5月1日(火) |
入館料 | 一般・大学生 100円(50円) 小・中・高校生 50円 (20円) ( )は20名以上の団体料金 ※満70歳以上の方は無料(要証明書) |