館蔵浮世絵に見る さくらいろいろ
江戸での花見は、もともとは、一本の名木を鑑賞し、酒宴を催して詩歌を詠む、といった形が主流でした。しかし、享保年間(18世紀初頭)、桜が江戸各所に植樹されると、桜並木の下での酒宴という、現在に通じる花見スタイルが広まっていきました。江戸の桜の名所はいくつかありましたが、景観や場の雰囲気など、それぞれに特徴があり、その様子は浮世絵にも描かれています。また、庭木や鉢植えなどにも桜が描かれていることもあり、桜の名所以外でも、江戸の人々がさまざまな形で桜を楽しんでいたことが分かります。
- 歌川広重画
「東都名所 飛鳥山満花の図」 - 江戸の桜の名所の一つであった飛鳥山を描いた浮世絵。絵の中央には、飛鳥山のシンボルでもある、桜を植樹したいきさつなどを記した石碑が描かれている。
- 歌川広重画
「東都名所 吉原仲之町夜桜」 - 江戸幕府公認の遊廓だった吉原。そのメインストリートである仲の町(なかのちょう)には、毎年花の美しい時期だけ、観桜を催すため、桜の木が植えられていた。
- 喜多川歌麿画
「『普賢像』挿絵 酔いどれ女」 - 花見の帰り道を描いた浮世絵。酩酊状態の女性の後に続く、最後尾の男性二人は、酒が入っていた角樽と桜の枝を運んでいる。