* イラン西部〜中部の塩袋 *
このエリアは、イランの中でも比較的すごしやすい気候で、古代から発達した都市も点在しています。現在では、伝統的な遊牧生活はほとんど残っていないエリアですが、このエリアの遊牧民が作り出した絨毯は精緻で高価です。塩袋も、どちらかと言えば色数が多く華やかな印象です。
- アゼルバイジャン地方の部族の塩袋
- 北西イラン・1980年頃〈47×30.5cm〉
全体に渋い色に見え、実際に使用されたものとも見紛うが、外側に比べて内側の色は鮮やかで、時代の新しい未使用品ではないかと思われる。
Salt Bag ‘Namakdan’, Tribes of Azerbaijan Area, North West Persia, ca.1980
- バクティアリ族またはアフシャール族の塩袋
- イラン・1950年頃〈57×44cm〉
現代的な作品よりも落ち着いた色合い。パイルを結び足した絨毯織りで底部分を補強している。収集時のデータはバクティアリ族だが、アフシャール族かその他の部族の紋様ではないかとの指摘がある。
Salt Bag ‘Namakdan’, Bakhutyari or Afshar, Persia, ca.1950
精緻な紋様を作り出す織りの技法は、経糸(たていと)に緯糸(よこいと)を通して絡めながら織っていく平織りの一種ですが、塩袋に多用されるキリム織りは、強く詰めた緯糸が経糸を覆い隠すため、表からは緯糸だけしか見えません。毛糸を草木染めにした緯糸の絡め方だけで紋様を作り出しています。単純な平織りに加え、緯糸を斜めに絡めていく技法、経糸をいくつか飛ばしにしながら緯糸を往復させていく技法など、複雑な技法が組み合わされて多彩な紋様になります。紋様の色を変えるたびに緯糸を変えながら、気が遠くなりそうな作業を経て、最終的に1枚の布になっているのです。なかには、キリム織りの生地に、さらにパイルを結び足した絨毯織りを組み込んだものまであります。