たばこと塩あれこれVarious topics of tobacco and salt

ミュージアムコレクション

塩

遊牧民の塩入袋/ブロイ族の塩入袋

遊牧民にとって、塩は、単に食用としてだけでなく、家畜の群れのコントロールなど、生活上欠かすことのできない重要な役割を担っています。塩は、生理的に塩欲求の強い草食動物の習性を利用して、家畜の群れのコントロールもできるのです。中でも、イラン・アフガニスタン・パキスタンにかけての西アジア地域に展開するクルド族やバルーチ族をはじめとした遊牧民は、伝統的に、各部族を象徴する紋様を織り込んだ羊毛織の塩入袋(ナマクダーン)を使用してきました。人間が使う塩もこれらの塩入袋に入れて保管・運搬することで家畜に舐められないように、袋の口を小さくした凸字形をしているのが特徴です。当館では12点の塩入袋を収蔵しています。

ブロイ族の塩入袋
ブロイ族の塩入袋
(パキスタン 1950年代)
ブロイ族は、バルーチ族とほぼ重なる地域に居住する遊牧民です。ブロイ族の塩入袋には、袋の端に数多くの結び目がつけられたものがあります。これは、家族の無事などを祈るたびに一つずつ増やされていくものです。一般的には、塩の容れ物の装飾に凝るような例は少ないですが、塩が重要な意味を持つ遊牧民だからこそ、色彩に乏しい砂漠の生活に映える色合いで、塩入袋を美しく飾るようになったのでしょう。