採かんの発達/イオン交換膜法(昭和46年〜)
昭和47年(1972)以降、日本の製塩法は、イオン交換膜と電気エネルギーを利用してかん水を採り、真空式蒸発缶(しんくうしきじょうはつかん)で煮つめる方法に変わりました。昭和25年(1950)ごろから研究が進められたイオン交換膜法は、昭和41年(1966)以降、実用化へ大きく進展しました。イオン交換膜法では、これまでのような広大な塩田が不要で、天候にも左右されず、経済的に能率よく優れた品質の塩が生産できます。これは、日本人が長年培った、塩づくりに対する英知の結集といえるでしょう。
イオン交換膜法のユニットがならぶ電気透析室
◆イオン交換膜法の原理
(1)海水の中で、塩は+の電気を帯びたナトリウムイオン(Na+)と−の電気を帯びた塩化物(塩素)イオン(Cl-)に分かれています。
(2)海水を入れた槽の中にプラスイオンだけを通す陽イオン交換膜と、マイナスイオンだけを通す陰イオン交換膜を交互にならべ両端から電流を流します。
- ・Na+は−極に向かって移動しながら陽膜を通りぬけますが、陰膜ではねかえされます。
- ・Cl-は+極に向かって移動しながら陰膜を通りぬけますが、陽膜ではねかえされます。
3)膜と膜の間にかん水(濃い塩水)が集まる濃縮室が1つおきにできます。この原理は電気分解とは異なり、化学変化をともなうものではなく、電気透析と呼ばれます。電気の力で海水中のイオンをこしとって集める方法です。
- ※こうしてできたかん水は真空式蒸発缶に送られ、煮つめられて、塩の結晶になります。
※イオン交換膜は、マグネシウムやカルシウム、カリウムなどのイオンも通します。 - ※一方、イオン交換膜は、PCBのような化合物や重金属などの大きな物質は通さないため、有害物質を濃縮しないという、製塩に都合のよい性質も持っています。