きせる
江戸時代に形成されたたばこ文化の特徴のひとつに、「細刻み(ほそきざみ)をきせるで吸う」ことがあげられます。なぜ、葉たばこを細く刻むようになったかは、諸説ありますが、毛髪のように細く刻むという例は、外国には見られません。細刻みの技術の発達につれて、きせるは火皿が小さくなり、持ち運びに便利なように短くなりました。それに加え、金属部分に彫刻をし、羅宇(らう)に蒔絵(まきえ)を施すなど、装飾性が見られるようになりました。雁首(がんくび)と吸い口が金属で、羅宇(らう)には竹を用いた一般的な形の他に全体が金属の「延べ(のべ)きせる」も見られます。また木・陶器・ガラス・石なども素材とされました。
◆きせる(江戸初期〜幕末)
◆さまざまな形のきせる
- 刀豆(なたまめ)形のきせる(江戸後期)
- 刀豆に似て全体が扁平で懐中に入れやすい形です。
- 光大寺形のきせる(江戸後期)
- 飛騨の古刹光大寺の客殿で使用され、雁首(がんくび)、吸い口が丸く大きく火皿の小さいのが特徴です。
- 砧(きぬた)形のきせる(江戸後期)
- 町人が好んだ形です。
- 玉川形のきせる(江戸後期)
- 御家人(武士)が好んだ形です。
- 夫婦きせる(江戸後期)
- 吸い口が2本にわかれ、ふたりが一度に喫煙できます。
- 手綱(たづな)形のきせる(江戸後期)
- 喫煙よりも形の大胆さを見せるためのものです。
- ぎやまんきせる(江戸後期)
- ガラス製のきせるで、茶席で珍重されました。